第15回 西淀病院喘息学習会の報告
2020年10月17日第15回目の学習会を行いました。新型コロナ感染が続く中で春に続き中止も検討しましたが、次回いつできるか見通せないため決行しました。一般公開はせず過去の参加者で連絡の可能な方に限ってお知らせし、最初予定していた10月10日が台風の為、急遽一週間延期となりました。そのため参加者は4名と少なかったのですが、日頃の交流が存分にでき、楽しい学習会になりました。またこれとはべつにコロナ禍の中での生活の工夫などを交流しようと皆さんに「コロナと私」という文集の作成を呼びかけ、11名の方から投稿いただき、文集は投稿者全員に送付しました。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。これからも、交流も大事に学習会を続けたいと思います。
日時 2020年10月17日(土)
時間 14時~16時(休憩15分、今回患者間での交流会を45分とりました)
場所 のざと診療所3階会議室(感染予防のため広い部屋で行いました)
内容
(1)最近の喘息に関する情報・学会の報告 2020/10/17 大野
1)日本で初めて「喘息学会」ができました。喘息は今まで日本呼吸器学会や日本アレルギー学会の中で一つの分野として学会活動をしてきました。糖尿病は日本糖尿病学会などその疾病に特化した学会がありましたが喘息にはありませんでした。今年初めて第一回日本喘息学会が開催されました(8月8-9日大阪市内でウエブ併用)。喘息の事を集中して勉強するのには便利になりました。
2)薬剤の副作用報告から抗アレルギー剤として広く使われるモンテルカストナトリウム(商品名キプレス、シングレア、モンテルカスト)に自殺念慮に注意という警告が出ました。
アメリカFDAにより2009年にも精神症状が出る事が指摘されていました。2020年3月「自殺念慮および行動などの精神症状を含む副作用」にて添付文書変更をと強い警告がでています。基本的注意の項に「本剤との因果関係は明らかではないが、うつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、患者の状態を十分に観察すること」と医師への警告が出ています。
3)シムビコートにジェネリック品発売
吸入ステロイド薬と長期作用型気管支拡張剤の合剤で一番高価だったシムビコートにジェネリック登場、「ブデホル」です。薬価はシムビコート60吸入用4252円がブデホルでは2136円になり約半額になっています。まだ供給体制が安定しないのであまり市中では出回っていないようですが、今後広がっていくと思います。
(2)効果的な吸入で良好な喘息コントロールを手に入れよう!「ホー吸入の紹介」
喘息における長期作用型抗コリン薬吸入について
【30分】講師 冨士代真希
1)ホー吸入について
ぜんそくとは、肺につながる空気の通り道である「気道」に慢性的な炎症が起こり、ほこりなどのわずかな刺激で気道が狭まって、せきや呼吸困難などの症状が出る病気です。
ぜんそく患者のおよそ4~8割が、治療の基本である「吸入器」を正しく使えていなかったことが判明しました。
そこで、せっかく毎日忘れずに吸入している吸入薬を最大限に活用するための吸入法、「ホー吸入」を学習会ではご紹介しました。
吸入前に軽く肺の中の空気を出す際に「ホー」と言ってから、吸入器をくわえ薬を吸うと、吸入の効果が高まります。何も意識しない通常の吸入では、舌が邪魔をして薬の45%しか気道に届いていないことが判明。一方、ホーと発声することで舌を下げ、その状態をキープして吸入を行えば、薬の75%が気道に届くことがわかりました。
これは「ホー」と言った時の舌と喉の状態が広がった状態になり吸入薬の通り道を妨げにくいからです。この詳細は動画配信サービスで公開されています。(YuTubeで「ホー吸入」と入れて検索してください)
2)長期作用型抗コリン吸入薬・3成分配合喘息吸入薬について
長時間作用型抗コリン薬とは、気管支を広げる効果の他に気道の分泌物を減らしたり、気道の痰の産生を少なくして呼吸困難の改善をする効果があります。
喘息治療の基本は吸入ステロイド薬です。効果が十分でない時には、これに長時間作用型β刺激薬を追加します。それでも効果不十分な時には、長期作用型抗コリン吸入の追加を検討することがあります。いくつかの研究では、重症喘息患者さんの治療薬に抗コリン剤を追加することで改善効果も示されました。
2020年9月、日本で初めて喘息治療薬で3成分(ステロイド・β刺激薬・抗コリン薬)合剤吸入器が発売されましたので学習会で紹介しました。発作などがなく、喘息症状が安定している患者さんで複数の吸入器を使い、吸入していた薬が1種類、1日1回の吸入になることは、患者さんの日常生活にも吸入忘れ防止にも良い効果があると思います。
(3)喘息患者は新型コロナウイルスに感染しやすいのか?
新型コロナ感染にかかった約1万7千人(中国、米国、メキシコ)の分析では糖尿病やCOPD(肺気腫)を持っている人とは違い、喘息患者が特にかかりやすい訳でもなく重症化しやすいわけではないと報告されています。理由として報告されているのはウイルスが肺の細胞にくっつく際のACE2受容体というものが喘息患者では少ないことが挙げられています。しかし喘息の人が普通の感冒によくみられるRSウイルスに感染するとその受容体がふえるという報告もあります。喘息の人が注意する点を列記します。
ⅰ)喘息治療の吸入ステロイドを使用している人はやめないで続けること
ⅱ)発作がひどくなれば医師の指示通りステロイド薬を増やすこと
ⅲ)普通の感冒にもかからないように注意する(規則正しい生活も)
(4)「私とコロナ」の紹介と患者交流会【45分】
・今後の意見交換会に求める形態は文集の形式でいいと思います。近況報告と質問コーナーを
設けてほしい
・今まで一番、今回来てよかったです。心からほっとしました。
・(文集の中身でウオーキングなど生活に運動を取り組んでいる人が多かったのですが)
私も1日1万歩を目標に徒歩運動を心がけています。
- 参加者の感想
・最新の情報が得られてよかった。
・喘息患者がコロナにかかりにくいという事がわかり、良かった。しかし安心せずに気を付け
ます。
・大野先生、薬剤師さんありがとうございます。ひたすら感謝しています。
・今日は出席者が少なく、みなさまが新型コロナに注意をしていることがわかりました。
今回の情報も大変有益です。病院のホームページに資料だけでも載せてはどうでしょうか?
次回の学習会は来年の春から初夏を予定していますが、感染状況を見て検討していきます。
みなさん、新型コロナ感染対策も大事ですがインフルエンザや普通の風邪もひかないよう
日頃の体調に注意しましょう。
<お問い合せ先>
西淀病院 医局宛て
〒555-0024 大阪市西淀川区野里3-5-22
電話:06-6472-1141 FAX:06-6474-7685