第19回(最終回) 西淀病院喘息学習会の報告
最終回となる第19回西淀病院喘息学習会を2024/12/7午前10時から12時までのざと診療所3階で行いました。今回で最後とあって大阪喘息大学時代から係わってこられた方も多く、合計13名の参加者でした。講演終了後、参加者に一言ずつ感想や近況報告を話していただき、最後に参加者・スタッフと記念撮影し、終了しました。
講義1「ぜんそく治療薬の歴史と新薬」
吉本利樹薬剤師
【喘息の歴史】
喘息患者さんの記録は紀元前1550年からあり、とても古くから記録されている疾患です。1600年代まで喘息という言葉は呼吸困難を示す一つの症状としてとらえられていましたが、1600年ベルギーの医師が喘息を一つの疾患としてとらえるようになりました。
【喘息治療の変遷】
19世紀末になって喘息の合理的な治療が始まり、その後ステロイド、テオフィリンなどが喘息に有効と判明し使用され始めました。1970年代初めに吸入ステロイドが発売されましたが、日本での普及は遅れていました。日本の喘息治療ガイドラインが発表されたのは1993年、それ以後吸入ステロイドの使用は徐々に広まりましたが、一般に広く使用されだしたのは2000年以降です。その後は吸入ステロイドの発展が続き、吸入ステロイドの普及とともに喘息死亡者は減少、1990年代60000人であった喘息死数は、2023年1089人と激減しています。
その後生物学的製剤が登場。現在使用可能な5つの生物学的製剤の紹介。
【今後の展望として】
喘息死ゼロにとどまらず、発症自体を抑止する新たな治療薬の開発が期待されます。
講義2「睡眠と健康 睡眠と気管支喘息」
大野啓文医師
➀新型コロナワクチンについて
殆ど報道されませんが、今も新型コロナによる死亡者数は年間3万人以上の状況が続いています。死亡者のほとんどが65歳以上の高齢者で、特に「ワクチン接種して1年以上経過した高齢者」の死亡が多いそうです。高齢者〔65歳以上〕でワクチン接種できる人はぜひワクチン接種しましょう。
②睡眠時無呼吸症候群と喘息
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状やメカニズムの説明と喘息との関係について説明しました。それから川崎医大から報告された外来通院喘息患者97人に実施した簡易睡眠時無呼吸検査の結果から「外来喘息患者の実に4割の人が中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の可能性があった」という報告についてお話しました。簡易法での診断ですので厳密に睡眠時無呼吸症候群と診断はできないのですが「喘息のある人で、いびきやいびきの途中で無呼吸になる人、昼間の眠気の強い人は睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみる」ことをお勧めします。(簡易法は自宅で簡単に実施でき、医療費は3割負担の人で3千円くらいです)
③健康と睡眠 睡眠と喘息
「喘息で死なない、喘息でない人と同じような生活ができることを目指そう」と以前は言われましたが、現在は喘息の人も「運動もして健康寿命を延ばすこと」が目標になりつつあります。健康な生活を維持するために、睡眠が次のように大きな役割を果たしています。
- 記憶の整理(一日にあった出来事で覚えておくことや忘れることの仕分けなど)
- 免疫力(睡眠不足だと風邪をひきやすくなる)
- 精神の安定(情緒の安定にも重要)
- 骨や筋肉を強くする
- アンチエイジングホルモンの分泌
などです。最近注目されているのは認知症の予防です。頭を使ったことにより出てくる脳の老廃物、これが脳にどんどん溜まるのがアルツハイマー病という認知症です。質の良い睡眠はこの老廃物がたまらないように働いています。よい睡眠をとるには寝る前の努力だけでは不十分で、起きている昼間の過ごし方が大きなカギになります。私の良い睡眠をとるための取り組みも紹介しました。
【参加者の感想】
- 久しぶりに参加できとても勉強になりました。これが最後なのが残念です。
- 私は夜寝るときは横を向いて寝るようにしています。無呼吸症候群が喘息の人もかかると聞きびっくりしました。
- 学習会に最後の出席が出来てよかったです。良い睡眠のとり方などこれからは心がけて過ごしていきたいと思います。長い間、本当にお世話になり有難うございました。
- 今日が最後なので横浜から来ました。(朝6時の新横浜から始発にのりました)
- 喘息に理解がなかった主人が、学習会に一緒に出るようになって、少しづつ私の病状を理解してくれるようになりました。本当にありがとうございました。
- 睡眠の大切さが良くわかりました。寝つきよくなるように生活見直します。
- 私の健康法はハミガキを1日1回は丁寧にする(口腔衛生)。自分なりの健康法を考えてみようと思いました。睡眠の重要性を知る事ができよかったです
- 睡眠の大切さが、よくわかりました。健康第一に生活していきます。
- 長い間ありがとうございました。色々な方との出会いで人生勉強もしまして良き日々でした。今まだ好きな仕事も出来ています。眠ることの大切さを理解しました。
【最後の御挨拶】
足掛け27年続いた大阪喘息大学を2012年閉校した後に西淀病院喘息学習会を開始、2024年の今回まで計19回の学習会をあおぞら薬局の薬剤師の皆さんの協力のもと継続することができました。喘息大学を始めた時38才だった私も、今年で77歳の喜寿となりました。この学習会は今回をもって終了とさせていただきます。喘息学習会開催にご協力いただいた「のざと診療所」のみなさん、19回の講演会の講師を支えていただいた「あおぞら薬局薬剤師」の皆様、そして学習会に参加し励ましていただいた「参加者」の皆様、本当に長い間ありがとうございました。
2024年12月 のざと診療所 大野啓文
<お問い合せ先>
西淀病院 医局宛て
〒555-0024 大阪市西淀川区野里3-5-22
電話:06-6472-1141 FAX:06-6474-7685