【 story2 】 救急外来 一瞬を見逃さない②
〈 見えてきたもの 〉
男性の一人暮らしで荒れた生活をイメージしていたのが、
部屋は整理整頓されていたこと。
ずっと独身かと思っていたのに、
冷蔵庫に子どもの写真が飾ってあったこと。
病気が原因で仕事も家族も失ったこと、
子どもは妻に引き取られ会うこともできないこと、
離婚後ますます意欲が出なくなり
家に引きこもるようになったこと・・・。
病院では聞けなかったAさんの暮らし。
訪問後のカンファレンスで、スタッフ全員と共有。
Aさんへの具体的な支援方法が話し合われました。
引きこもり生活の中で昼夜逆転しているので、
入院治療ができる別の精神科病院を勧め、
それでもAさんが来院した時にはできるだけ話を聞いて
不安を和らげることにしました。
当時新人だった日田看護師は言います。
「最初はなぜ家にまで行く必要があるんだろうと思っていましたが、
外来では見られなかった患者さんの表情や事情を知ることで、
対応する側の気持ちが随分変わることが分かりました。」
Aさんの来院は徐々に減り、今では2ヶ月に1度になっています。
〈 地域を見守る外来 〉
金田看護師は言います。
「外来に『死にたい』と言って来たことだけ伝えても
わからないこと、伝わらないことだらけ。
行かなければ見えないことは本当に多いんです。
患者さんの背景を伝えたことで、
こういう人生があってしんどくなったんだという思いを持てるし、
夜中に来ても『また来てるわ』にはならない。
看護師の見方が変わります。」
こうもつけ加えます。
「地域に住んでいる患者さんの見守りやから、うちらの役割はね。
だから、訪問に行って様子見た先で地域の人にも声をかける。
結局はうちの患者さんたちにつながることでもあるし。
「西淀(病院)」が来てくれたっていう安心感も提供できている。
お金にならなくても、経営はそういう評価をしてくれていると思います。(笑)」
西淀病院では、日本でもまだ数少ない、
病院の中で治療を行うだけでなく、
地域と一緒に健康づくりをすすめる病院として
HPH(ヘルスプロモーション=健康増進活動拠点病院)
という国際的な認定を受けています。
看護師たちもこの視点で地域の健康づくりを
大切な仕事のひとつとしています。
〈 救急外来の醍醐味は 〉
救急外来は本来、患者さんと一期一会の関わりが多いところです。
外来看護歴16年の金田看護師は、
今外来をこんな風に考えています。
「病棟から外来に異動したとき、すごく抵抗があって、
患者さんの背景がどうとかよりも、病態だけでした。
なんでそんなんしなあかんねんって新人の気持ちも良く分かります。
いま、外来の患者さんとの一瞬の出会いの中で
どれだけSOSを見逃さないか。
これが私たち西淀病院の本当の看護の中身じゃないかなって思います。」
忙しさを乗り越えるのはやっぱりやりがいです。
ただ診療介助をするだけではない、家族だったらという気持ちで
患者さんを受け入れられたら最高の看護だと思っています。
「最終は在宅看護かなと思ってるんですよ。
でもまだちょっと外来で伝えたいなと思っていることもあるので。」
つづく