【 story4 】 訪問看護 108歳。暮らしまるごと②
〈 リスクを共有するいのちのノート 〉
多職種間のチームワークに欠かせないのは、連絡ノートです。
普段は利用者さんの家に置いておき、
必要に応じて書き込んだりチェックしたり。
Aさんの場合、寝ている間に体がベッドから
ずり落ちてしまう危険性があるため、
その予防策や細かい報告等もノートで共有しています。
もちろん、多職種が集まるケア会議もこまめに開きます。
ケアマネージャーやヘルパー事業所、保険薬局の薬剤師、
車椅子のレンタル業者も参加し、
皆でAさんの生活の安全を話し合っています。
「Aさんの生活は危険と隣り合わせ」と話すのは、
訪問看護歴9年の早川看護師。
「夏の暑さも、秋口からの寒さも、
ベッドから落ちて動けなくなれば命取りにもなります。
寒いとき下に落ちたら、毛布を引っ張り、
くるまってしのげるよう近くに置いておきます。
戻れなくても、それを引っ張って掛けてしのげるよう。
そんな一つひとつのことに気を配りながら
リスクを共有しています。」
〈 チームが暮らしを支える 〉
「何か問題が生じたとしても、
自分1人で全てを解決しないといけないわけではないので、
過度な精神的負担はありません。」
と若手の看護師は言います。
信頼できるチームワークが、
利用者さんだけでなくスタッフの安心にもつながっています。
Aさんは、家の建物は自分のものですが、土地は借地です。
出て行くよう督促されたこともありました。
周りの人たちと頑張って交渉しました。
テレビの音がうるさいとか、クーラーの音がうるさいとか、
そういう生活の隅々が、ヘルパーさんとかケアマネさんとか
近所の方とか、いろんな人がいろんなことで関わり
生活を支えています。
お金のことは(往診に来ている)診療所の
信頼できる師長さんに全部任せています。
〈 3年がんばれば見えてくる 〉
在宅看護の大きなやりがいは、
「患者さんの笑顔」とスタッフは口をそろえます。
しかし実際の業務はそう楽ではありません。
暑い夏は汗だくで自転車を飛ばし、
雨の日はカッパを濡らして利用者さん宅を
回らなければなりません。
病棟にはないそうした仕事に、
新任の看護師は1年目で悲鳴を上げることも
珍しくないそうです。
師長は「利用者さんの家にお邪魔するということは、
看護師の立場が病棟とは完全に変わります。
最初はそこでの精神的ストレスもあるし、
時には利用者さんとの相性が合わないこともあります。」
しかしそれをグループ内で助け合いながら乗り越えれば、
「自分だからこそできるケアが見えてくるはず。」
と言います。
だから新任の人には
「3年がんばれ」と励まし続けています。
つづく