【 story4 】 訪問看護 108歳。暮らしまるごと①
早川 千夏
西淀病院入職17年
7年間の病棟勤務後、
訪問看護で10年
現在訪問看護ステーション主任。三児の母
●「家で暮らしたい。」入院したくないという利用者さんは
少なくありませんが、その望みをかなえる為には、
本人の思いを尊重して頑張る看護師チームが必要です。
同時に、地域の方々も含めて、様々な職種の関わりなしには
毎日の暮らしを支えることはできません。
朝行って亡くなっているリスクもあります。
それでも、支えようとする思いをつないで
利用者さんの願いをかなえる看護師には大きなやりがいがあります。
利用者さんと家族の暮らしを丸ごと見つめての看護は、
病棟にいた頃には、なかなか気づけなかった看護です。
〈 「家で死にたい」の願い 〉
訪問看護ステーション「コスモス」では、
毎月約800軒の利用者さん宅を13人の看護師が
グループを組んで回っています。
24時間対応なので夜中に出勤することもあります。
そこで求められる訪問看護の役割を
澤田師長は「患者さんのアセスメント」にあると説明します。
「血圧や熱を測り、表情を見てその時の状態を把握する。
単に喋っているように見えても、家の状況や危険な場所など
様々な点をチェックし、高齢の人の体を医学的に考慮する。
その上で必要なケアを、状況に応じてどれだけ提供できるか
訪問看護の力が試されます。」
今年108回目の誕生日を迎えたAさんは、夫を早くに亡くし、
子どももいないため30年以上ずっと一人暮らしです。
訪問看護を始めて15年になります。
朝昼夕の食事や掃除・洗濯等は介護ヘルパーが、
お風呂介助は訪問看護師が行なっています。
トイレは数年前までポータブルトイレを使用していましたが、
今は寝たきりの毎日。
週に1回、往診の医師が様子を見に来ます。
「私はここ(家)で死ぬ」というのが口癖のAさん。
家は窓からすきま風が絶えないほど古い木造平屋ですが、
それでも離れたくないと何度も入院を拒否してきました。
Aさんの在宅生活は、その思いを支える多くの人たちの手で
守られ続けています。
〈 「お湯が少ない」「ええあんばい」 お風呂大好き 〉
週1回の訪問看護はAさんの好きなお風呂にこだわってきました。
自宅は昔のお風呂で、タイル貼りの寒い床に
ステンレスのすごく深いお風呂です。
看護師もAさんも体力的にも時間的にも大変です。
年齢的には訪問入浴で入れてもらうレベルですが、
訪問入浴の事業所では、男性スタッフに
お風呂に入れてもらうこともあってAさんはとても嫌がっていました。
でも大のお風呂好き。
浴槽にたっぷり熱いお湯を張り、
肩まで浸かって汗を流す一時が至福の時間です。
「お湯が少ない」とか「ええあんばい」などいろいろ言ってくれます。
年々ADLも落ちてきているので、さすがに今はお湯は少なめにして、
ちょっとぬるめにし、浸かってもらう時間も短くなりました。
利用者さんの望みをできるだけかなえることが、
在宅看護のやりがいにもなっています。
だから、訪問看護ではお風呂介助を頑張っています。
そして、高齢の利用者さんの1年1年のお誕生日を
とても大切にしています。
つづく