喘息学習会

第17回 西淀病院喘息学習会の報告

 新型コロナ感染の第8波が起こる前にと2022年10月29日、約10ヵ月ぶりに第17回喘息学習会を行いました。参加者は11名でしたが、久しぶりに参加された方もあり、最後に全員の方に一言ずつ「喘息の治療 今昔」の講演の感想を出していただきました。いろんな話が聞けて私たちも大変勉強になりました。ありがとうございました。

【講義の内容の紹介】

講義1【最近の喘息のトピックス】

  1. 小児喘息で寛解治癒した人は、成人後喘息症状がなくても加齢に伴い呼吸機能の低下がひどくなる場合があり注意が必要です(特に成人後喫煙していると特に大きく低下が起きてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症する人もいます)
  2. 長期作用型気管支収縮抑制剤(抗コリン吸入薬・・スピリーバ・レスピマットなど)の説明をしました。吸入ステロイドと長期作用型気管支拡張剤を使っても咳や痰が続く場合などに使います。
  3. 今年の4月の薬価改定の結果、各薬剤の価格比較を説明しました。〔吸入ステロイド+長期作用型気管支拡張剤の合剤〕の場合、吸入ステロイドが少ない方はブデホル、多い方はアテキュラ、レルベアが一番安価となっています。

講義2【気候変動と喘息】

地球温暖化で世界的に喘息患者は増加しています。温暖化の喘息患者さんへの影響は

  1. 地上のCO2上昇による地球の温度上昇が今後も進み、熱波・洪水・台風が多くなり住宅を損傷し空気中に様々な粒子を散布。有害化学物質等発生し、また花粉の飛散期間、飛散量が増加し喘息発作がより起こりやすくなる状況が予想されます。
  2. 温暖化で大きな山火事が頻発しています。遠くまで煙が蔓延するのも発作を誘発します。
  3. 高濃度のCO2はカビの発生を増加させたり、肺への強力な刺激物質となる都市部のスモッグを増やすことが今後予想されています。
  4. 「気温が一度上がるたびに成人の喘息関連入院が3.25%増加している」との米国の学会の報告もあります。今、温暖化を防ぐために世界中の国が大決断して、産業や生活スタイルの変更が必要です。戦争も温暖化を促進しています。

講義3【喘息治療の基本 吸入薬のおさらい】

 薬剤師の森脇さんからステロイドや気管支拡張剤の詳しい説明と吸入サポートツールの紹介がされました。おすすめは日本喘息学会の吸入操作ビデオのページで、現在発売されている吸入薬の種類別の一覧表が出てきて薬剤別の吸入操作の動画がみることができます。

 このほかに「ほー吸入」の説明も同じ一覧表に掲載されています。「ほー吸入」は現在吸入の基本とされていて、学会でも何回も繰り返し紹介されています。口と舌の形を「ほ~」と発音するときのようにして吸入すると、のどの奥が開いて吸入薬の吸入効率が良くなります。どちらも分かりやすく丁寧に説明されていますので、まだの方はぜひご覧ください。

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 そのほか喘息にアレルギー性鼻炎の合併している人などに有効な吸入ステロイドを吸うときに「口から吸って鼻から出す」鼻呼出の方法を紹介しました。  

講義4【喘息の治療 今と昔】

 喘息の特効薬「吸入ステロイド」が広く使われるようになったのは1990年代。それまでは主に発作を抑える薬しかなく、患者さんは長らく苦しんできました。

 ミミズを飲んだら治るなどの民間療法が家庭の医学書に長く記載されていたり、喘息の正しい医療情報も広まらず誤解からくる喘息患者さんへの偏見(喘息を「業病(前世の悪業の報い)だ、怠け者だ」)、喘息とは他人に言えず就職にも不利になると隠して就職し、職場の喫煙で発作が出て困る人もいました。

 医師と患者関係は、現在のようなインフォームドコンセントという言葉さえなく、喘息について質問することさえできない状況の中で一人発作に苦しみ孤独な闘病を強いられてきました。

 その当時の患者さんの状況を1986年から足掛け27年間、私たちが開催した大阪喘息大学(西淀病院HPに概要説明のパワーポイントを掲載しています)卒業生の卒論集(文集)の中から抜粋して紹介しました。

 吸入ステロイドがなかっただけでなく、医療情報もその当時ほとんどなし、社会全体が障害を持つ人に対する対応が不十分であった状況であったことも、喘息の息苦しさを増大させていたというお話をしました。昔の辛かった頃を思い出して涙される方、「小学生のころ喘息の同級生がキャベツの間にナメクジを飼っていてそのナメクジを飲んでいた」と話される60歳代の患者さんもあり、改めて大変な時代であったのだな~と痛感しました。

参加者の意見・感想 抜粋

  • 喘息大学入学式の時にかかっていた“喘息の主治医は自分”この言葉を常に心にとめてがんばっています。幸い7人の孫に喘息児はいない。不思議な事です。ありがたいと思います。
  • 久々の講義で良く学ぶことが出来ました。今日を機会に学び直したいと思います。
  • 講義を聞いていると昔の喘息で苦しんだ時のイメージが戻り、よく立ち直って今あることに感謝。フルタイド吸入のあたりから良くなってきた様です。
  • この会がとても楽しみです。皆さんの元気そうな感じをみると、私も「大丈夫」って安心感があります。今は大阪市の中心部に住んでいますが、東京23区に住んでいた時の方がもっと空気が悪い実感がありました。卒論集のお話の大半が14歳からの自分と重なりました。中高一貫校で、ぜんそく同志で話していたら「ナメクジを飲んでいる」友人がいました。
  • ぜんそくという診断がでて20年近くなりますが、自分で漢方を煎じて作る薬を服用していたこともありました。今は薬を見直していただいて楽になりました。
  • 吸入薬でも沢山の種類があるのがよく分かりました。吸入方法も良く分かり自分がどのタイプの吸入薬を使用しているのかが分かりとてもよかったです。
  • 学習できたこと、そして医療をとりまく社会が間違っていたというのがとてもよく分かりました。

次回は2023年6月頃の予定です。新型コロナ感染の蔓延状況を見ながらになりますので、また当院ホームページのお知らせ欄に予告を掲載します。皆さんもコロナ感染には十分注意されてお過ごしください。


<お問い合せ先>
西淀病院 医局宛て

〒555-0024 大阪市西淀川区野里3-5-22
電話:06-6472-1141 FAX:06-6474-7685


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